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アジアン・フリート(国際通信社)を買ってきた。

●『アジアン・フリート』は、日本近海、西太平洋域で想定されるアジア諸国の軍事的衝突を想定した海上作戦シミュレーションゲームである。

経済成長に裏付けられた軍備増強によって侮りがたい外洋艦隊へと躍進しつつある中国海軍。装備は旧式ながら、弾道ミサイルと核開発によって新たな不安定の種となっている北朝鮮。そして日本との間に領土紛争を抱え、過剰とも言える海軍の近代化に邁進する韓国。特定アジアと日本との関係は、まさに「今、そこにある危機」となって、緊張の度合いが高まっている。

『アジアン・フリート』では、こうした特定アジア諸国の海軍をはじめ、アメリカ第7艦隊や台湾海軍、そして日本の海上自衛隊の主要艦艇を全てユニット化。各国の空軍も配備状況を反映して重要な役割を果たすようにデザインされており、さらに将来の変化に備え、配備予定の新兵器も多数ユニット化されている。

上記の通り、『アジアン・フリート』は現代の海空戦をテーマにした卓上(コンピューターゲームではないという意味での)シミュレーションゲームである。

IMGP2179s.jpgコンピューターゲームならば、PCを立ち上げ、プログラムをインストールしたあとは、アイコンをクリックすればゲームを楽しむことができる。しかし、卓上ゲームは、六角形のマス目(ヘックスという)が描かれたマップを広げ、シナリオに指定されたとおりにコマを並べなければならない。乱数を発生させるためにはサイコロを振る。このゲームでは「10面体ダイス」(左写真)が必要だ。
10面ダイスを振ると0~9の数字が出るので、それによってゲーム中に試みた何かが成功したのか、失敗したのか、あるいはどのくらい成功したのか、どのくらい失敗したのかを判定するわけだ。

このゲームがどんなゲームなのかを体験するために、航空自衛隊の攻撃部隊が、三陸沖の米第7艦隊を攻撃する想定で演習を行ってみよう。一応選択・上級ルールの類も全て入れてやってみる。

日本側戦力

Asianfleet(JASDF01).jpg日本側の攻撃部隊はF15Jx2ユニット、F2x2ユニット。1ユニットは戦闘機の場合、概ね20~22機程度の飛行隊を表しているので、この4ユニットは70~80機からなる戦爆連合の大攻撃部隊ということになる。
F-15Jは高い空戦能力を持つ迎撃戦闘機。空自はこの機種を複座タイプのF-15DJと合わせて202機を保有している。ゲーム中ではシナリオにもよるが、最大で7個飛行隊(7ユニット)が登場する。
F-2は日米で共同開発が行われた支援戦闘機。1度に4発の対艦ミサイルを搭載、発射することができるため、同規模の戦闘機としては、世界でも有数のレベルの対艦攻撃能力を有するとされている。現在もまだ生産中だが、最終的には94機を調達する予定となっている。ゲーム中では2個飛行隊(2ユニット)が登場するが、全ての生産機が配備されれば3個飛行隊となるため、コマとしても3ユニットが用意されている。
航空機ユニットの例さて、コマの下部には「INT」という文字がある。これは恐らく「Intercepter」の略で、「迎撃機(戦闘機)」であることを示している。このような「INT」機である場合は、ルールで制空任務、対地任務、戦闘攻撃任務のいずれかを選択しなければならないことになっている(ユニットの数値の意味については左図)。制空任務では空対空力がそのままなのに対し、SSM(対艦ミサイル)力、爆撃力は0になる。空戦はできるものの、SSM攻撃や爆撃はできなくなるわけだ。
一方、対地任務ではSSM力、爆撃力はそのままだが、空対空力は1になる。戦闘攻撃任務では、空対空力は半分(端数切り捨て)になり、SSM力、爆撃力は本来の値から20を差し引いたものになる。
例えば、F-2の例では以下のようになる。

制空任務   空対空力:11、SSM力: 0、爆撃力: 0
対地任務   空対空力: 1、SSM力:60、爆撃力:60
戦闘攻撃任務 空対空力: 5、SSM力:40、爆撃力:40

そこで、SSM力、爆撃力を持たないF-15Jは攻撃隊の護衛機として制空任務、F-2は対地(艦)任務を行うものとする。
4ユニットの合計では、空対空力が28、SSM力が120となる。

アメリカ側戦力

Asianfleet(7thfleet).jpg米第7艦隊は第7艦隊 (アメリカ軍) - Wikipediaにもある通り、ニミッツ級航空母艦「ジョージ・ワシントン」を中核とする強力な艦隊である。ここでは「ジョージ・ワシントン打撃群(ストライクグループ)」とも呼ばれる「第5空母打撃群」が登場する。

まずはニミッツ級空母「ジョージ・ワシントン(G.WASHINGTON)」。搭載している対潜水艦哨戒ヘリについては、水上艦ユニットの能力としてあらわされるので、高いASW(対潜水艦戦)能力を持ち、また大きな排水量(満載排水量:104,200トン)からくる高い防御力を誇る。
しかし、それよりもやはり艦載機の存在だろう。ゲームではF18Ex2ユニット、F18Cx2ユニット、早期警戒機のE2と電子戦機のF18Gが1ユニットずつ搭載されている(電子戦機は今はまだEA-6Bである)。
水上艦船ユニットの例F18は正式にはF/A-18ともいう、アメリカ海軍の主力戦闘攻撃機である。F/A-18Cの改良型がF/A-18Eである。いずれも空中戦にも対地(艦)攻撃にも使用できる万能選手ともいうべき存在。「ジョージ・ワシントン」にはこれらのF/A-18を含めて、85機の航空機が搭載されている。

「ジョージ・ワシントン」を護衛するのはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「カウペンス(COWPENS)」、「シャイロー(SHILOHE)」、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「カーティス・ウィルバー(WILBUR)」、「ジョン・S・マケイン(J.S.McCAIN)」、「フィッツジェラルド(FITZGERALD)」、「ステザム(STETHEM)」、「ラッセン(LASSEN)」、「マクキャンベル(McCAMPBELL)」、「マスティン(MUSTIN)」の9隻。対空ミサイルの搭載数や誘導能力、対潜水艦ヘリの搭載能力などで違いはあるが、すべてがいわゆる「イージス艦」である。それらから、特に非常に高い防空能力を持つ艦隊だということができるだろう。


余談だが、かつて崩壊前のソビエト連邦が行った「オケアン70」演習において、「対艦ミサイルの飽和攻撃戦術」(対処できないほどの数の対艦ミサイルを目標~米空母機動部隊~に集中させることによって、相手に大損害を与えようという戦術)の脅威が明らかになり、高い防空能力を持つ「イージスシステム」の開発が進んだ(イージスシステムそのものは、対空、対潜水艦、対水上艦などの統合戦闘システムだが)という面がある。また、F-2に4発の対艦ミサイルを搭載させることになったのは、逆に日本版「オケアン演習」を実現させるためだとも言われる。つまり、この両者の対決は共に「オケアン演習」から生まれた楯と矛のその後であるとも言えるのである。


戦闘開始!

まずは米軍プレイヤーが空母上空にCAP(戦闘空中哨戒)任務としてF18Ex2ユニットとE2を上げる。残るF18Cx2ユニットについては、攻撃のために取っておいてある想定だ。E2をCAPに使うのは、そうしないと空戦で使える空対空力が減少するため。「空飛ぶレーダー」と言われる早期警戒機がなければ、効率的に迎撃が行えないことを示している。

ともあれ日本軍プレイヤーが攻撃隊を艦隊の3ヘクス隣まで移動させたとき、米軍プレイヤーはCAPによる迎撃を宣言、空戦を解決する。なぜ3ヘクスかと言えば、F2のユニットにSSM射程が「s2」と書かれており、2ヘクスの距離から攻撃できるからで、対艦ミサイルを撃たれる前に阻止するためである。

まずは長距離空対空戦闘を解決する。長距離空対空能力を持っているのは米軍のF18Eのみ。長距離空対空戦闘結果表で、F18Ex2の空対空能力の合計20の欄でサイコロを振ると目は「2」で結果は「0」。この戦力ではサイの目が6以上でないと「1」以上の損害を与えられないので、攻撃隊に損害はなかった。

続いて空戦を解決する。
CAPに対する空戦では、基本的にはCAP側が常に攻撃側となる。このゲームでは空戦は常に攻撃側が有利。「攻撃側」というよりも、「イニシアティブ(主導権)を取った側」ということなのだろう。

米軍側はF18Ex2とE2の空対空力の合計が21。AEWがいるので、空母から3ヘクスの距離でも空対空力は落ちない(AEWがいなければ3ヘクスでは空対空力が1/2になってしまう)。
一方の日本軍側は前述のとおり28。防御側に有利なように戦力比を出すと1:2となるので、1:2の欄を見てみる。この場合、攻撃側(米軍側)勝利(日本軍攻撃隊が撤退)の可能性は50%、引き分け(双方撤退)の可能性が10%、防御側(日本側)勝利(米軍CAPが撤退)の可能性が40%となっている。守備側が攻撃側の勝利の可能性を上回るには1:3以上、つまりこの場合、CAPの2倍以上(43以上)の空戦力をつぎ込まなければならないということになっているのを見ても、「攻撃側有利」なのがわかるだろう。

しかし、ここでサイの目は「3」。結果は「0r/0」(攻撃側/防御側。数値は失うステップ数、rは撤退しなければならないことを表す)となり、F18EとE2は無傷ながらもCAP任務を中断、空母に戻らなくてはならないことになった。CAPは突破されたのだ。

日本軍プレイヤーは攻撃隊を空母の隣のヘクスまで移動させた。2ヘクス隣りからでも攻撃はできるのだが、2ヘクス以上離れた距離からSSM攻撃を行った場合、目標の隣接ヘクスに自軍の水上艦艇、潜水艦がいなければ損害判定に-3の修正がつくのを嫌ったためだ。だが、隣接ヘクスから航空機によってSSM攻撃が行われた場合、イージス能力を持つ水上艦の広域対空力は6倍されるため、どちらがいいかは場合によるだろう。

ともかく日本軍プレイヤーは隣接ヘクスからSSM攻撃を宣言した。SSM力の合計は前述のとおり120、SSM力の半分以上(というか全部)がSSM距離に「s(シースキマー)」と記載があるので、この攻撃は「シースキマー」攻撃である。

米軍プレイヤーは、SSM攻撃を判定する前に、ユニットのスタック(積み重ね)の順番を変えることができる。
これはSSM攻撃では、スタックの前半分か、後半分のどちらかしか攻撃できないため、うまく並び順を変えれば、仮に損害が出ても、艦隊全体としての能力の低下を最低限に抑えることができるためである。
で、高い広域対空能力を持つタイコンデロガ級は前後半で1隻ずつ分けることとし、またASW能力の高いアーレイバーク級のフライトIIAの3隻(ラッセン、マクキャンベル、マスティン)も前半1隻、後半2隻に分け、近接対空火力の低いタイコンデロガ級にはアーレイバーク級を隣接させることとして、並び順は以下のようになった(CVは空母、CGはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦、DDはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦を指す)。
(前半分)「CVジョージ・ワシントン」、「DDカーティス・ウィルバー」、「CGカウペンス」、「DDラッセン」、「DDジョン・S・マケイン」
(後半分)「CGシャイロー」、「DDフィッツジェラルド」、「DDマクキャンベル」、「DDステザム」、「DDマスティン」

続いて日本側プレイヤーが前半と後半のどちらを目標とできるか判定する。サイの目は「8」。偶数であるから前半分が目標となる。
日本側プレイヤーは「ジョージ・ワシントン」ただ1隻を目標とすることを宣言した。

米軍プレイヤーは、防御戦闘を行うために、まず対空力の合計を計算する。
対空力には、広域対空力と近接対空力の2種類がある。広域対空力は、そのヘクスに存在するもの全てを加算することができる。近接対空力は、目標になった艦と、そのすぐ後ろにいる艦の分だけを加算することができる(つまり目標を分散すれば、それだけ近接対空火力が増える)。

広域対空力としては、タイコンデロガ級が13x2隻、アーレイバーク級が8x7隻で合計は82。「シースキマー」攻撃なので、広域対空力が2倍になることはないが、航空機による隣接ヘクスからのSSM攻撃であるため、広域対空力は6倍となり、合計は492(!)。
さらに目標である「ジョージ・ワシントン」と、すぐ後ろの「カーティス・ウィルバー」の近接対空力、それぞれ10と8を足して合計は510となる。
戦闘結果表には「90以上」の欄より大きなものはないので、90以上はいくつでも同じである。広域対空力を6倍しなくても(つまり隣接ヘクスからのSSM攻撃でなくても)合計値は100となるので、判定上、100でも510でも同じなので日本軍プレイヤーは広域対空力6倍を選んだというわけである。

で、防御戦闘にはTF(タスクフォース)を組んでいることにより+2の修正がつく。
サイの目は「8」。+2して防御の10の欄を見ると結果は「10」。この値は攻撃判定の際のマイナスの修正値となる。

次に日本軍プレイヤーが攻撃戦闘を解決する。
SSM力の合計は120、防御側スタックにイージス艦がいることにより、-1の修正がつく。
サイの目は「8」。防御戦闘の-10、イージス艦の-1を加えて、攻撃の-3の欄を見ると結果は「3」。
「ジョージ・ワシントン」の防御力は9であるため、その半分を超えられず、「ジョージ・ワシントン」にダメージを与えることはできなかった(半分を超える5以上で1ステップロス、防御力を超える9以上で撃沈できる)。

戦闘結果表を見ると、攻撃戦闘で「90以上」の欄で5以上の結果を出すためには、修正後のサイの目が「0」以上、9以上ならサイの目が「8」以上でなければならない。
しかし、防御戦闘では、たとえサイの目が「0」でも結果は「6(-6)」となるので、一撃で「ジョージ・ワシントン」を沈める(修正後のサイの目を「8」以上とする)ことは無理だということである。
さらに、防御戦闘で「5」以下の目が出たときのみ、結果は「8(-8)」以下となるので、攻撃戦闘で修正後のサイの目が「0」以上ということが起こる可能性があるので、ようやく空母にダメージを与えられることになる。

今回の結果「3」でもイージス艦の防御力4ならば損害を与えられるので、空母機動部隊を攻撃するためには、地道に1隻ずつイージス艦を潰して行くしかないということになる。今回は「ジョージ・ワシントン」のCAPを既に撤退させているので、この後はP-3Cなど空戦力を持たないユニットでもSSM攻撃を行わせることができる。
ただし、例の隣接ヘクス6倍というのがある限り、例えアーレイバーク級2隻でも対空力が「90以上」になってしまうため、自軍の水上艦や潜水艦(特に潜水艦)を空母に隣接させて、2ヘクス以上の距離で遠距離攻撃をしていかなければいけないという、割とどうにもならない現実を付きつけられるゲームである。

また、今回は基地航空隊が攻撃を行っているわけであるが、実際には米第7艦隊は、基地航空隊の攻撃範囲外から、イージス艦に装備されている巡航ミサイルを撃ち込んで、航空基地を使用不能にしてから接近してくるので、このような航空攻撃そのものが成立しえないと言えるだろう。

まあ、中国空海軍の悩みがわかるゲームである(笑)。

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