今朝の日刊スポーツに以下のような記事が出たようだ。
来年度からJリーガーの国内移籍が完全自由化されることが3日、決定的となった。国内移籍の場合、現行ルールでは契約期間が満了しても元所属クラブに保有権が認められ、最大で年俸10倍分の移籍金が発生する。しかし新ルールは国際基準に従い、年齢に応じてJが設定した移籍係数が撤廃され、契約満了選手は移籍金が発生しない。移籍可能期間も夏と冬の各1カ月と、国際基準に合わせる。先月末にJ事務局が各クラブに10年度からのルール移行の趣旨を伝えた。
これに伴い、選手は契約が切れる6カ月前から他クラブと交渉ができる。ほとんどの選手が翌年の1月31日まで契約を結んでいるため、今季限りで契約が切れる選手は、今年8月から移籍交渉が可能となる。Jクラブ関係者は「シーズン最中にライバルクラブとも交渉できる仕組みはおかしい」と話した。
移籍活発化で選手間の競争がさらに激しくなることから、プレーの質向上につながる可能性が高い。努力した分、年俸も保証される。しかし主力以外の選手は年俸カットなどの可能性も出てくる。別の関係者は「年俸が上がる分、解雇される選手も出てくる。移籍自由化がいいものばかりではないと思う」と心配した。
国内移籍自由化は、今月10日のJ実行委員会で各クラブの意見を募り、6月の理事会で承認される見込み。アジアを超え、世界を目指すJが、ようやくルール上も世界と同じ土俵に立つことになる。[2009年3月4日7時13分 紙面から]
Jリーグ選手協会は以前からこの「移籍自由化」を主張してきた。例えば以下の記事。
Jリーグ選手協会(藤田俊哉会長)は27日、都内で代表者会議を開き、国内移籍の際に生じる移籍金の撤廃をJリーグ側に再度働きかける方針を示した。FIFAは05年に移籍に関するルールを改正したが、日本では「選手は契約が切れる6カ月前から自由に他クラブと契約を結ぶことができる」という条項を和訳した際、"自由に"の部分が欠落。関係者は「その部分が加われば(移籍係数が発生する)30歳未満でも契約が切れる選手は移籍金なしで移籍できる」と話したが、Jリーグからは各クラブ、リーグで影響を調査中との理由で具体的な回答は得られなかったという。選手協会では今後、FIFAに改正の徹底を求めるほか、年度内に回答を得られない場合はFIFAやCAS(スポーツ仲裁裁判所)に訴える可能性もあるという。
[ 2008年10月28日 ]
これに伴って、これまでJリーグをめぐる風物詩的存在だった「11月30日のゼロ円提示」というものがなくなることになる。
それ以外ではどんなことが変わるだろうか?
- 選手の平均収入額は大きくは変わらない
- これは各クラブが人件費として支出できる額が変わるわけではないから。ただし、過渡期には他の支出を切り詰めて人件費に充てるということもあるかもしれない。
- 個々の選手の収入の格差は広がる
- 違約金を支払ってまで移籍を望まれるような選手は、実際に移籍するにせよ、あるいは残留するにせよ、その度に条件が上がっていく。逆に、契約を更新してもらえずに下位クラブに拾われる選手は条件が下がってしまうだろう。実力主義というものだが、その格差は開くはずだ。
- 戦力は平均化されない
- 制度的には「移籍しやすくなる」仕組みと言える。とは言え、各クラブとも代表選手だとか、間違いなくレギュラーというような1線級の選手に対しては、容易に契約切れ移籍はさせないように、契約を延長するようにするだろう。移籍が盛んになるのは出場機会を得たい1.5線級や契約が更新されるかどうか分からない2線級の選手が中心だろう。1線級の選手の移籍には必然的に違約金が必要となるので、財政力のあるクラブでないと難しい。つまりそうしたクラブに1線級の選手は集まることになる。もっとも、1線級、1.5線級などの見極め方によっては、財政力のないクラブにも勝負のしようはある。
- リーグ全体で見るとチーム力は底上げされる
- ポジションを得たい1.5線級の選手の移籍が盛んになれば、各クラブのレギュラーポジションには当然制限があるので、現在2線級の選手を使っているクラブのポジションにも1.5線級の選手がある程度行き渡ることになる。もっとも、サイドバックなどそもそもの人数自体が少ないポジションもあるので絶対とは言えないが。
- 高卒選手の変化
- 既存の選手の契約は制度が変更になっても大部分はシーズンの切れ目で終了することになるだろう。なぜなら、選手にとってもチームにとっても、シーズンの途中で入れ替わるのは難しいことだからだ(例外は降格の危機にあるチームがシーズン終盤に獲得する選手で、これはチームに刺激を与えることが目的の一つだから)。するとある程度戦力の整ったチームは、既存選手の契約延長でも、他クラブの選手の獲得でも、シーズン終了の6か月前には翌シーズンの陣営の大部分を固めてしまうことになる。すると、高卒の選手はごく一部の限られた者を除いて、入り込む枠(人数的にも資金的にも)が小さくなってしまうかも知れない。現実にここ数年のうちで、高卒でいきなりレギュラーを獲得、チームに影響を与えるほど活躍しているのはアントラーズの内田篤人ぐらいだろう。高卒新人の存在感が小さくなる流れはさらに進むだろう。少なくとも、冬の選手権で活躍した選手が、その活躍で上位クラブへ加入というようなことは少なくなるのではないだろうか。ユース出身や大学卒の選手は高卒選手とは違って7~8月に昇格・入団交渉をしても問題は少ないだろうから翌年のチーム作りの中に入り込めるだろうけれども。
- クラブ間の役割の固定化
- 現在のJリーグでは、中立的に見て戦力が整っていないクラブでも、シーズン初めには「優勝」、「上位」、「ACL出場圏内」というものを目標にしている。またそれが可能なのが現在の状況でもあるのだが、財政力がクラブ間の格差を広げていけば、財政力のないクラブにとってはシーズンを戦う難易度は上がるだろう。優秀な選手が育ち、活躍して、あるシーズンに躍進しても、その選手は引き抜かれ、また次のチャンスを狙わなければならない。いや、そうして選手を育てて売ること自体がそのクラブの財政力を支えることになる。いわゆる「プロヴィンチャ」クラブの誕生である。現在もそういう傾向はあるが、常に上位に入っているクラブと、数年おきに上位に絡んでくる年があるクラブに分化していくことだろう。
- 代理人の力が強くなる
- これは契約交渉がシーズン中になるので当然である。「力が強くなる」というよりも「活躍の場が増える」と言うべきか。移籍が決まった場合、現在では移籍先クラブで発表、会見なども行われるが、シーズン中に次の契約が決まった場合には、移籍元、移籍先のいずれのクラブでも立場的に難しいので、代理人の事務所や、ホテルなどで発表、会見が行われるようになるかもしれない。
- 海外移籍が増える
- 相馬崇人のCSマリティモ(ポルトガル)への移籍や、小林大悟のスタバエクIF(ノルウェー)への移籍などを見ても、たとえある程度条件が悪くても海外クラブへの移籍を望む選手は少なくない(相馬や小林の条件が悪いかどうかはわからないが)。特にヨーロッパのクラブは選手の獲得、放出によって利益を得る仕組みになっているところも少なくないから、本人さえ望めば、契約満了6か月前以前の契約延長を拒否するだけで、ヨーロッパのクラブへの移籍が実現できる可能性は増える。必然的に海外移籍に挑戦する選手は増えるのではないだろうか。
日刊スポーツの記事では今年8月から移籍交渉が可能になるとしているが、実際には来年8月からではないだろうか?
というのも、今年の8月から認めてしまえば、今のJクラブは移籍させたくない選手の契約を守るために、今年の7月までに再度契約延長の交渉をしなければならないからである。
と、理屈では思うのだが、実際にどうなのかはよく分からない。

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