ところで、この「Nessun Dorma」というアリア、今ではとても有名になっていますが、ちょっと前まではこんなメジャーな聴かれ方をされるようなものではありませんでした。じつはこの曲は、ある日突然大ブレイクしたという、クラシックには珍しい体験を持っているのです。
1990年にサッカーのワールドカップがイタリアで開催されたのはご存知でしょう。その時にイギリスでサッカー中継の番組を担当していたディレクターが大のパヴァロッティのファンだったのです。そう、あのルチアーノ・パヴァロッティ。そこで、自分の番組のオープニングに、パヴァロッティが歌っているこの曲を流したのです。趣味の押し付けですね。ところが、これを聴いたリスナーがすっかりハマってしまって、なんとシングル盤までリリースされてしまいました。そうしたら、それがUKのシングルチャートのトップに躍り出てしまったのですよ。シングルチャートですよ。あの頃だと、カイリー・ミノーグとかリック・アストレイ(もうすでに懐かしい)といったダンス系の音楽がチャートを賑わせていた頃。そこへクラシックの王道とも言えるオペラアリアがチャートインしただけではなく、何週間かトップを獲得していたというのですから、これは前代未聞のことでした。
これがきっかけとなって、例の「3 Tenors」、いわゆる「3大テノール」のコンサートが開催されたのです。もちろん、目玉はパヴァロッティが歌う「Nessun Dorma」。それからというもの、この催しはワールドカップの恒例行事となり、1994年にはLAのドジャース・スタジアム、1998年にはパリのエッフェル塔の下から全世界に衛星中継されるという大イベントとなってしまったのです。元はといえば、1ディレクターの出来心(ちょっとちがうかな)。おかげで、この曲は地方のアマチュアオーケストラの定期演奏会のレパートリーになるまでのポピュラリティを獲得したのですね。
先日ラッセル・ワトソンによるハーフタイム・ショーで歌われると伝えられた“誰も寝てはならぬ” = Nessum Dorma ですが、上記のように曲自体もサッカーにゆかりの深いものだったんですね。
普通の日本人だったら間違いなく聴いたことがあるメロディーが、とても立派なオーケストレーションで何回も何回もしつこく現れてきますから、3回以上は大笑いできることは間違いなし。
だそうですよ。
ちなみに、上に出てくるルチアーノ・パヴァロッティ、先日2005年10月12日(誕生日)のコンサートを最後に引退すると発表されました。
そこにむけて世界で「さよならコンサート」を開いていて、この4月には来日して東京でもコンサートを開くそうです。
駒場で歌うラッセル・ワトソンも4月16日と、18日に東京でコンサートを行うそうですが、新進のラッセル・ワトソンとベテランの大御所ルチアーノ・パヴァロッティ、東京で交錯するこの2人、オペラファンにはどうとらえられているのでしょうか?
(いや、ちょっと調べてみた限りではそういう書き方をしたものはなかったので、多分関連付けられていることはないんでしょうけど)
関連エントリー
初めてのハーフタイム・ショー